憲法学会第120回総会並びに研究集会を、下記の通り開催いたします。ご多忙中とは存じますが、万障お繰り合わせの上ご出席下さいますよう、ご案内申し上げます。
平成30年9月13日
憲法学会理事長 東 裕
(1)カナダのヘイトスピーチ規制に係る抗弁の役割と日本への示唆
首都大学東京 鈴木 崇之
司 会 武蔵野学院大学 鈴木陽子
シンポジウム
「明治憲法再考 ― 明治維新150年にあたって」総合司会 日本大学 池田実
(2) 問題提起―明治憲法の論じ方について
パネリスト 苫小牧駒澤大学 新庄勝美
(3) 統帥権の行方―昭和28年の憲法改正案から明治憲法を再考する―
パネリスト 高岡法科大学 荒邦啓介
(4)明治憲法と国体
パネリスト 松蔭大学 高乗智之
(5)明治憲法下の政教関係
パネリスト 皇學館大学 新田均
(6)日本占領期における明治立憲君主制の展開―昭和天皇はいかにして“象徴”になったか―
パネリスト 朝日大学 下條芳明
質疑応答
(1) 総会及び懇親会の出欠について、送付済みの案内状に同封のはがきで、10月26日(土)までにご返信下さい。
(2) 平成30年度の会費(機関誌代を含む)一般会員8,000円、院生会員5,000円を未納の方は、会場の受付にてお納め下さい。
(3) 懇親会にご出席の方は、懇親会費6,000円をいただきます。
(4) 会場付近の案内は下記をご覧ください。
(5)「京王プラザホテル八王子」にご宿泊される会員の方には、特別価格のプランをご案内します。直接ホテルに電話をして頂き(042-656-3111)、「日本文化大學で開催される憲法学会に参加する」旨を伝えてください。なお、特別プランの部屋をすでに確保していますが、満室になることがありますので、お早めに予約をお取りくださいますようお願い致します。
本会は、既にご承知のごとく、昭和34年4月「万国の憲法に通ずる普遍的原則を究明するとともに、わが国固有の独自性の上に憲法生活を確立する」ことに寄与することを目的として結成されたものでありますが、この際入会希望者をご紹介くださる方には、所定の入会申込書をお送り申し上げますので、その旨お知らせ下さい。
日本においては、いまだヘイトスピーチが十全に規制されていないといわれている。しかし、ヘイトスピーチ規制は、同時に憲法上の権利である表現の自由を侵害する危険性を孕んでいる。本報告では、カナダにおけるヘイトスピーチの刑事規制、とりわけ抗弁の役割に焦点を当て、表現の自由とヘイトスピーチ規制の調整という観点から、検討をする。
明治憲法に対しては「国民に苦難を強い、日本帝国に悲惨な最期を迎えさせた元凶であった」といった評価が今もって付きまとい、この憲法を真正面から考察することは「憲法研究の邪道」として敬遠されがちである。明治憲法に言及するにしても、日本国憲法への賛辞の伏線を敷きながら「旧憲法」の弱点なり欠陥を挙げ連ねていくアプローチが大半を占めている。しかし、明治憲法を論ずる際には、現時点で合点がいく仮想の概念や特定の準拠理論を忍ばせることは差し控えるべきだろう。明治憲法への理に適った再考のためには、「此ノ憲法ノ核実」や「憲法ノ骨子」、帝国議会と内閣との「調熟」などへの「潜思熟考」が欠かせないはずである。報告では、明治憲法における緊急権制度の今日的意義について取り上げたい。そのねらいのひとつが、時にペジョラティフないし倒錯的な捉え方が通用している「戒厳(EdS)」についての謂れなき誤解を解くことである。
明治憲法下の統帥権は、一般的には否定的なイメージを持たれているといえる。ところでその統帥権は、現行憲法下でも議論の対象とされてきた。例えば、日本国憲法の改正論議に際して、あるいは自衛隊法制定に際して、である。そこで本報告では、明治憲法下の統帥権のあらましを確認し、――遠回りだが、「急がば回れ」との先人の言葉を信じて――従来管見の限り触れられていない政府筋の(実験的な)現行憲法改正草案の検討を通じ、明治憲法下の統帥権を再考したい。
成文憲法典が先に制定され、その後に国家が成立した国はなく、憲法は国家の成立事実と不可分の立国の精神の基礎の上に存在している。この立国の精神たる不文の法は、国家の本質的なものという意味で国体ということができ、それぞれ表現する形は異なるもののいかなる国家にも必ず存在するものである。そして国体は、その国の伝統的秩序を形成する淵源であるから、不文憲法、立国法、建国法、国体法などと呼ばれることもある。しかし、明治憲法下、国体の概念は各分野において多義的に用いられてきた。その中にあって、憲法学上、国体概念がいかに理解され、それが現在の日本国憲法下の議論にどのような影響を与えたのであろうか。そこで、本報告では、明治憲法下における国体をめぐる学説を概観し、その問題点について若干の考察を試みたい。
芦部信喜・高橋和之補訂『憲法』(第六版)の「明治憲法の信教の自由」(154頁)に記されている解説を手掛かりとして、今なお憲法学界を覆っている明治憲法下の政教関係についての誤解を正す。芦部氏の説明を取り上げるのは、ロングセラーとなっている本書の理解が、今日の通説を形成していると考えるためである。また、政教関係との関連で「神権主義的」だとされる皇位の明治憲法における根拠づけについても検討する。
宮内庁書陵部が近年編纂した『昭和天皇実録』の日本占領期に関する記述を読むと、当時の昭和天皇が立憲君主として、とくに「上奏」あるいは「内奏」の機会を通じて、憲法や安保条約など戦後日本の国家建設に積極的に取り組もうとした姿が浮かび上がる。明治憲政史を振り返ると、ドイツ型立憲君主制を定める明治憲法の下で、大正デモクラシー期にイギリス型議会君主制の慣行が不十分ながら成立したことが指摘されているが、占領期の天皇制の運用はこうした歴史的経験に基づき行われたと思われる。本報告は、終戦の詔書、近衛憲法草案、新日本建設の詔書(人間宣言)、全国巡幸、松本草案、象徴規定の導入、芦田修正など日本国憲法成立までの経過をたどり、昭和天皇はどのような立憲君主制観の下で日本国憲法体制の確立に関与し、また、それが独立回復後の象徴天皇制の形成にどのような影響を与えることになったのかを検証してみたい。
憲法学会では、会員の方々が憲法学会もしくは他の諸学会および所属の大学や研究機関などにおいて、個人的に発表された「学術論文の抜刷」の募集をおこなっております。論文抜刷を再度掲示し、販売することにより後進の研究材料ならびに発奮材料としたいと考えた次第です。
記
(1) ご自身が発表になっている「学術論文の抜刷」であること。
(2) この場合、発表先の機関、所属機関などは限定いたしません。
(3) 冊数論文内容は特に限定いたしません。但し、「学術論文の抜刷」に限らせていただきます。個人的な宣伝文・パンフレットの類はご遠慮願います。また、寄贈いただいた後は、すべてその使用・収益・処分の権限は憲法学会事務局にあるものといたします。
(4) 寄贈いただいた抜刷は、事務局が責任をもって保管・販売させていただきます。
(5) 寄贈いただいた「学術論文の抜刷」は、憲法学会総会の際に会場にて各一部200円(当面)で希望者に販売いたします。またその売上金はすべて憲法学会の収益として、会計上処理されます。
(6) 送付先
東京都千代田区三崎町2−3−1
日本大学法学部 福島康仁研究室
(TEL. 03-5275-8779)
但し、総会開催当日、ご持参下さいましても結構です。
(7) 送付費用につきましては、憲法学会負担とさせて頂きます。従いまして後日、切手または小為替などにて返金させていただきます。