憲法学会第97 回総会並びに研究集会を、下記の通り開催いたします。ご多忙中とは存じますが、万障お繰り合わせの上ご出席下さいますよう、ご案内申し上げます。
平成19年5月1日
憲法学会理事長 竹花光範
電話 079-247-7301(代)
午前の部
福岡経済大学 小野義典
司 会 平成国際大学 野澤基恭
東洋大学 高澤弘明
司 会 近畿大学 石田榮仁郎
京都産業大学 所功
司 会 皇學館大学 富永健
日本文化大学 村松伸治
司 会 高崎経済大学 竹内雄一郎
志學館大学 長谷川史明
司 会 九州産業大学 下條芳明
一国の法体系の中で、憲法と条約との効力関係を考えた場合、報告者には、憲法優位説が妥当するものと思われる。しかし、「壮大な実験」と称されるEUに於いては、条約優位な状況も現在生まれつつある。それは、憲法よりもEU法の優位性を謳った欧州憲法条約(未発効)の規定を概観しても、見て取ることができる。本報告に於いては、こうしたEU法体系の中での、憲法と条約の効力関係を検討し、こうしたEU法の動向が、どのような意味を持つのか、考えてみたい。
ドイツ連邦憲法裁判所は、連邦(州)政府や連邦議会議員の3分の1の提訴により、ある規範が基本法と一致するかを決定する権限を有し、これを抽象的規範審査手続という。この手続きは提訴権者の法的権利に関係なく、連邦憲法裁判所へ提訴できることから、わが国の制度とはその性質を大きく異にする。そこで本報告では、抽象的規範審査手続について概観してみたい。
日本の近代国家は、天皇を中核に形作られてきた。その本質は戦後の現代でも陰に陽に残っている。しからば、天皇を頂点とする近現代の“皇室制度”(法制・官制・儀制など)は、どのように形成されてきたか。その概要を自作の年表により俯瞰しながら、明治〜大正期に次々解決された問題点と、戦後の占領下で対処に苦慮した問題点を、具体的に振り返る。それを通じて皇室制度の現状を再確認した上で、将来のために改め補うべき問題点を指摘し、その克服に向けての試案を提示する。
日本国憲法施行60年の今年、「日本国憲法の改正手続きに関する法律案」が4月12日に衆議院憲法調査特別委員会で、翌4月13日に衆議院本会議で可決され、参議院に送られた。しかしながら、日本国憲法成立の法理について、八月革命説、改正説、無効説、非常大権説など諸説が対立している。
本報告においては、従来の学説を整理しながら、成立の法理について検討を試みたい。
現代日本の憲法学において、憲法(constitution)は、「権利宣言を含む書かれた文書」「主権者によって制定される国家基本法」として把握されている。しかし、このような人為的制定法規としての憲法という概念は新しいものであり、もともとconstitutionは、歴史的に形成されてきた国の在り方そのもの、または国の現実の諸制度の中に発見させるべき実体的諸原則の総体を意味していた。新しい憲法概念は近代市民革命のイデオロギーと関連し、伝統的な憲法概念は英国保守主義の思想と親和性があるだろう。本報告では、近代における新旧二つの憲法概念を比較し、それぞれの思想的基盤を検討する。